大学の卒業制作として、映像インスタレーション展示作品"Luminique"を制作しました。
本作品の概要
この作品は、正面と床の2面に投影された映像を通して実体を体感できる、映像インスタレーション展示作品です。
正面に吊るされた半透明の布には、ガラスのような物質の動き回る様が投影されています。これが "実体" です。
その下の床には、光が"実体"の中で反射・屈折し、外へ拡散した光線が投影されています。これが "コースティクス" と呼ばれる集光現象です。現実世界で見られる"コースティクス"の例として、置かれたガラスのコップからテーブルに放たれる光の筋や、屋外プールの底に現れるうねうねとした光などが挙げられます。
手前の布に映し出された"実体"の形状や動き、光の差し込み方をもとに、床に拡散されるはずの光を"コースティクス"として計算し、実際に床に投影しています。これらを同期して高いフレームレートで投影することで、集光現象を擬似的に再現しようと試みています。
加えて、半透明な布をスクリーンに使用することで、後ろの壁にも"実体"が投影され、裏側に回って鑑賞することができます。布を通過して後ろの壁へ投影されたもう一つの"実体"を見たり、布の裏側に反転して浮かび上がっている像と展示室の空間とを重ねて見てみたり、さまざまな角度から近づいたり遠のいたりしながら鑑賞することも可能です。
使用したモデルについて
個人の制作に加えて、本作品を展示した卒展・修了制作展のデザイン班の一員として、実際の石を拾って模したロゴアイコン、そしてメインビジュアルの制作を担当させていただきました。その経験を踏まえ、このアイコンに動きをつけ、命を吹き込むことができるのではないかと考え、今回の卒展のアイコンをモデルに使用して本作品を制作しました。
デザインを共に制作してきた卒展24デザイン班の4人に感謝しています。
CG制作ワークフロー
映像はCinema 4Dでアニメーションし、Redshift Renderにてレンダリング、After Effectsで色味を調整しコンポジットを行いました。限られた時間だったというのもあり、自分の中では普遍的で手慣れたワークフローで制作しました。
当初の映像の尺感としては、5分程度を想定していまいた。しかし、60fpsの場合計18,000フレーム、30fpsでも計9,000フレームが必要になります。ましてや4Kで制作する場合は膨大な時間をレンダリングに費やすこととなり、スケジュールや費用としても非現実的であったため、2分尺での制作に落ち着きました。
フレームレートを倍にするだけでレンダリングに倍の時間がかかると考えるとかなり致命的であったため、限られた時間の中で使える手段として、アップスケーリング と フレーム補間 を使用しました。
1080p, 30fps, 2分尺で Cinema 4D からレンダリングし、After Effects プラグインの ScaleUp で2160pへアップスケーリング、DaVinci Resolve で60fpsへフレーム補間を行い、最終的に4K, 60fps, 2分尺の映像を完成させました。
これらの工程を"コースティクス"用の映像にも施し、計2本のCG映像を制作、投影しています。